2022/05/04

平調

 五常楽急

唐の太宗の作といわれる。五常とは、人の常に守るべき道である「仁・儀・礼・智・信」を指し、この曲はそれを雅楽の五声(宮・商・角・微・羽)になぞらえて作ったものという。「序」「詠」「破」「急」が完全な形で残っている数少ない曲の一つ。


皇章急

唐の中宗が、西戒(せいじゅう)反乱鎮圧に赴き命を失った将軍・王孝傑を称えて作ったという。「遊声」「序」「破一帖」「二帖」「三帖」「四帖」「五帖」「六帖」「七帖」「八帖」「九帖」「急」があったが、現在では、「破」「七帖」「八帖」「九帖」「急」のみが残されている。舞は絶え、楽曲としては、急だけがよく演奏される。


三臺塩急

唐の太祖の作とする説や、則天武后に献上された恋愛小説の内容を曲に表したものとする説などがある。

仁明天皇の時代、犬上是成が、唐から伝えたといわれる。もとは「序」「破」「急」の三部が整った舞楽だったが、現在は、急の楽曲のみが残る。


越殿楽

平安時代中期に、唐から伝わった。原曲は盤渉調だが、平調に移調されたものが有名。その旋律の美しさから、「黒田節」をはじめとするたくさんの民間音楽の原曲となっている。

曲名は一説には、中国西域にあった地名の古称「干闐<yu-tian>」の音訳であるといわれる。


陪臚

林邑楽(林邑とは現在のベトナム地方の古名)の曲で、天平八年に渡来僧・仏哲が伝えたという。元来は戦争の吉凶を占う音楽であったようだが、後世には、戦勝を祈り、凱旋を祝う曲となった。

「教訓抄」には、唐招提寺の「陪臚会」に、この曲を舞ったとある、現在、同名の法会はないが、5月19日に同寺で行われる梵網会には、必ずこの曲が奉納されている。

なお、この曲は、2/4拍子と4/4拍子の混合拍子である只拍子という珍しいリズムで奏される。